26歳、2日目。ここ数年、毎年誕生日の数日前からメンタルが急激に崩れる。去年も一昨年も当日は目が腫れるほど泣いた。何故だか今年はずっと泣けなくてそれが辛かったけれど、あたたかくて優しい言葉が心を癒してくれてようやく泣けた。苦しかったはずの呪いはこの数年をかけて、自分の中で弱くなったりまた少し強くなったりしながら、今は解けないでほしい呪いに変わりつつある。幸せな呪いだと思う。

 

誕生日の夜、寝息を立てる恋人の隣を静かに抜けて、逃げるように外に飛び出した。自分の足で行ける一番遠いところまで行ってしまいたかったのに、私は高速道路も運転できなければ翌日の予定も入れてしまっていて、どうしようもない気持ちのままただひたすら真っ直ぐに車を走らせた。数時間、数十時間をかけてでもあのまま遠くへ行ってしまえたらよかったのに、帰らなければいけないとふと我に帰って、また無心で彼の家まで戻った。ただの深夜ドライブになってしまって、滑稽すぎて我ながら呆れた。

私はまだ20代で、数年勤めている仕事も決まった休日も不満のない給料もきちんと得られていて、帰る実家も優しい彼も私のことが大好きな母もいて、読みたい本もたくさんあるし、20代のうちに経験してみたいことだってある。何も持っていないわけじゃないと分かっているのに自分には何もないような気がしてしまうし、こんなにも自由なはずなのにそれでもまだ自由が足りていないように思ってしまう。息苦しくなることがいまだにある。自分の足で行ける一番遠いところまで本当に行ってしまったら、二度と帰らないだろうな。海と緑が綺麗な場所に行きたい。